K-POPってダサい?海外の反応と世界の評価からオワコン説を解析
K-POPが世界的な現象となって久しいですが、その一方で「画一的でダサい」「ブームは終わった」という声が聞こえてくることも事実です。私が様々な情報源をリサーチした結果、多くの人が感じるその印象は、K-POPが直面する大きな転換期の一側面に過ぎません。
果たしてK-POPは本当にオワコン(終わったコンテンツ)なのでしょうか。この記事では、海外の具体的な反応やグローバル市場の最新データを基に、K-POPの「今」を徹底的に解析します。
K-POPは「オワコン」ではなく「構造変革」の最中

結論から言えば、K-POPはオワコンではありません。むしろ、これまでのビジネスモデルが限界を迎え、全く新しい産業構造へと移行する「変曲点」の真っ只中にいます。現在起きているのは、韓国国内の製品(CD)中心型産業から、グローバル市場の体験(コンサート)中心型エコシステムへの巨大なシフトです。「オワコン説」が浮上する背景には、この複雑な市場の二極化、つまり「国内市場の冷却化」と「グローバル市場の爆発的拡大」という、一見矛盾した二つの現実が存在します。
冷却化する韓国国内市場の実態
K-POPのお膝元である韓国国内市場は、明確な飽和と倦怠のサインを示しています。データによると、韓国内におけるデジタル音源の消費量は減少傾向にあります。これは、韓国の一般大衆のリスニング習慣が変化していることを示唆しています。
同時に、K-POPの強みであったフィジカルアルバム市場も、その成長が鈍化しています。これは、熱心な国内ファンダムの消費力に一つの天井が見え始めたことを意味します。国内の音楽チャートでは、アイドルグループよりもソロアーティストが優勢となる現象も起きており、これは消費者がより「真正性」や「感情的な深み」を求めるようになった結果だと分析できます。
加速するグローバル展開|ビジネスモデルの変化
韓国内の動向とは全く対照的に、グローバル展開は凄まじい勢いで加速しています。注目すべきは、業界の経済を牽引する主役が、アルバム販売からグローバルツアー(コンサート)へと決定的に移行した点です。
大手芸能事務所の収益構造を見ると、公演売上がアルバム・音源売上を上回るケースも出てきました。これは、単に製品(CD)を売ることから、複製不可能な「体験」を売ることへの完全な戦略的転換を意味します。このビジネスモデルのシフトこそが、K-POPが国内市場の停滞を乗り越え、世界で成長を続ける最大の理由です。
海外のリアルな反応|「ダサい」と言われる理由

K-POPに対する海外の反応は決して一枚岩ではなく、熱狂的な支持と厳しい批評が混在しています。
米国市場での成功と「軽すぎる」という批評
K-POPはアメリカ市場で確固たる地位を築き上げました。しかし、その成功と引き換えに、厳しい批評にもさらされています。例えば、BTSのメンバーであるジョングクのソロアルバムに対して、米ニューヨーク・タイムズ紙は「軽すぎてエッジがない」と批評しました。
これは、グローバル市場、特にアメリカのポップストレンドに合わせるあまり、K-POPが本来持っていた独自の魅力や音楽的な鋭さが失われ、洋楽に寄りすぎているという懸念の表れです。この「洋楽化」が、一部のリスナーから「個性がなくダサい」と見なされる一因となっています。
一部のファン行動とJ-POPとの比較
海外の音楽フォーラムなどでは、一部のK-POPファンがJ-POP(日本のポップカルチャー)を軽視したり、見下したりする傾向がたびたび問題視されています。
K-POP自体がJ-POPを含む様々な国の音楽から影響を受けて発展したという歴史的な経緯を指摘する声もあり、一部の過度な排他性や攻撃的なファンダムの姿勢が、K-POP全体のイメージダウンにつながっている側面は否定できません。
日本市場における特有のポジション
日本はK-POPにとって最大の海外ストリーミング市場の一つであり、非常に重要な拠点です。しかし、その人気は特有の構造を持っています。Billboard JAPANの年間チャートを見ると、アルバムチャート(フィジカルセールスが強く反映される)では、SEVENTEENのようなトップグループが上位を独占します。これは、高額消費を厭わない、強力で忠実なファンダムが存在することを示しています。
一方で、楽曲チャート(Hot 100)やアーティストチャート(ストリーミングやダウンロードなど広範な人気を示す)では、Creepy Nuts、Mrs. GREEN APPLE、YOASOBIといった日本の国内アーティストがトップを席巻しています。これは、日本のK-POPビジネスが、広範なカジュアルリスナー層の獲得よりも、特定の忠実なファンコミュニティに深く依存していることを示しています。
K-POPの未来戦略|第5世代と技術革新

業界は、国内市場の飽和や「画一的」という批評に対し、明確な未来戦略を持って対応を進めています。
「真正性」を重視する第5世代の台頭
2023年頃からデビューしている、いわゆる「第5世代」のアイドルグループは、従来の完璧で隙のないイメージとは異なる特徴を持っています。Stray Kidsのようにメンバー自身が作詞作曲を行う「自己プロデュース」を標準化したり、RIIZEのようにあえて「未完成」で共感しやすい自然な姿を見せたりするグループが増加しました。
これは、従来の完璧すぎるアイドル像への疲労感や、韓国内で指摘されてきた「真正性の欠如」という弱点に対する、極めて戦略的な回答です。
アイドル育成システムの課題と変化
K-POPの絶対的な強みである高度なトレーニングシステムは、その裏側で、アーティストの心身の健康問題や、創造的自律性の欠如といった深刻な課題を常に抱えてきました。第5世代に見られる「個人の自律性」や「創造性」の重視は、これらの根本的な問題点を克服し、アーティストがより長期的に持続な活動を目指すための必要な変化と言えます。
AIとメタバース|リスク回避のフロンティア
K-POP業界は、AI(人工知能)やメタバースといった新技術の統合を、世界のどの音楽市場よりもスピーディーに進めています。MAVE:(メイブ)のような完全にバーチャルなAI駆動のグループのデビューや、aespa(エスパ)が積極的に行うメタバース空間でのアバター活動は、その代表例です。
これは単なる話題作りや実験ではありません。人間のアイドルが本質的に抱えるリスク|スキャンダル、突然の脱退、兵役(韓国特有の問題)、そして心身の健康問題|から完全に解放された、永続的で管理なIP(知的財産)を創造するための、冷徹な長期戦略なのです。
まとめ

K-POPが「ダサい」あるいは「オワコン」という評価は、成熟期に入った国内市場の停滞や、グローバル化に伴う音楽性の変化といった、現象の一側面だけを切り取った見方です。
私が分析した現実の姿は、ビジネスモデルを旧来のCD販売からグローバルな「体験(ツアー)」へと移行させ、同時に「第5世代」の台頭やAI技術の導入によって、産業が抱える構造的な弱点そのものを克服しようと進化を続ける姿です。
K-POPは終わりを迎えているのではなく、次なる時代に適応するため、最も複雑でダイナミックな変革期を迎えているのです。