なぜBTSは反日と呼ばれ「日本に来たくない」と噂されたのか?その全真相と驚くべき現実

世界的なアーティストであるBTSに対し、日本では一時期「反日」というレッテルが貼られ、「彼らは日本に来たくないのではないか」という噂が広がりました。この疑惑は、特に2018年のある出来事をきっかけに爆発的に拡散しました。
しかし、その噂とは裏腹に、BTSは論争後も日本で記録的な商業的成功を収め、大規模なコンサートを継続しています。私がこのテーマを深掘りした結論は、噂は客観的なデータによって明確に否定されるというものです。
この記事では、なぜ彼らがそのように呼ばれたのか、その発火点となった出来事の全貌と、データが示す驚くべき現実を徹底的に解説します。
BTS「反日」疑惑の発火点|2018年に起きた複数事象の解体
BTSが「反日」と呼ばれるようになった最大のきっかけは、2018年後半に表面化した複数の出来事が収束した点にあります。これらは単発の問題ではなく、日韓の複雑な歴史認識や政治的背景と結びついて大きな論争へと発展しました。
原爆解放Tシャツ問題|デザインの意図と日本の受容
論争の中心的発火点は、メンバーのジミンが過去に着用していた一枚のTシャツです。このTシャツには、日本の植民地支配からの解放を祝う韓国の人々の姿と共に、原子爆弾のキノコ雲の写真がプリントされていました。
このデザインは、韓国の歴史的文脈において「日本の降伏(=原子爆弾投下)が朝鮮半島の解放をもたらした」という歴史的連なりを表現したものでした。デザイナー自身も、原爆被害者を嘲笑する意図や反日的な意図は一切なかったと述べています。しかし、日本では大きく異なります。原子爆弾のキノコ雲は、14万人以上の民間人が犠牲となった国家的トラウマの象徴です。そのイメージを「解放の祝い」という肯定的な文脈で使用したことが、被害者への冒涜であり極めて不謹慎であると広く受け止められ、強い反発を招きました。
ナチス関連イメージと世界的論争への拡大
Tシャツ問題はBTSの過去の活動に対する厳しい精査を促し、さらなる疑惑が浮上します。過去の雑誌撮影でナチス親衛隊(SS)の記章に類似した帽子を着用していたことや、過去の公演でナチスのハーケンクロイツを想起させると批判された旗を使用したことが指摘されました。
これにより、ユダヤ系人権団体「サイモン・ヴィーゼンタール・センター」が公式に非難声明を発表します。同団体は原爆被害者だけでなく、ナチズムの被害者に対しても謝罪を要求しました。この結果、問題は日韓二国間の対立から、歴史の記憶と責任を巡るグローバルな論争へと一気に拡大しました。
「ミュージックステーション」出演中止と政治的背景
一連の騒動が最高潮に達したのが、2018年11月のテレビ朝日「ミュージックステーション」出演中止です。テレビ局側がTシャツ問題を理由に出演見送りを発表するという、極めて異例の事態となりました。
この騒動が爆発的に拡大した背景には、当時の政治状況が色濃く影響しています。Tシャツ自体は2017年に着用されたものであり、数ヶ月間は大きな問題になっていませんでした。しかし、2018年10月末に韓国大法院(最高裁)が日本企業に元徴用工への賠償を命じる判決を下し、日韓関係が急速に悪化しました。この政治的緊張が日本の世論に「嫌韓ムード」を再燃させたタイミングと、Tシャツ問題の発覚が重なったのです。結果として、このTシャツは悪化する二国間関係の可燃性の高い環境下で、「反日」の象徴として格好の材料とされてしまいました。
事務所の公式対応と危機管理|いかにして事態を収束させたか
この国際的な大論争に対し、所属事務所であるBig Hit Entertainment(現HYBE)は、極めて戦略的かつ包括的な公式謝罪を発表し、事態の収束を図りました。
Big Hit Entertainmentの包括的謝罪
2018年11月13日、事務所は韓国語、英語、日本語で詳細な謝罪文を発表しました。この声明は、危機管理の観点から非常に練られたものでした。
声明では、事務所およびアーティストが全体主義、ナチズム、原子爆弾の使用を含むあらゆる過激な政治的傾向に反対する立場を明確にしました。その上で、アーティスト個人ではなく、監督不行き届きであった事務所に最終的な責任があると強調しました。これはアーティスト本人を守るための重要な判断です。
謝罪が受け入れられた理由|政治と人道の切り分け
この謝罪が多くの関係者に受け入れられた最大の理由は、謝罪の対象を明確にした点にあります。事務所は、特定の国家や政治団体に対してではなく、「原子爆弾によって傷ついた被害者」および「ナチズムによって影響を受けた人々」という、人道的な被害者に限定して謝罪しました。
これにより、韓国国内の歴史認識(=解放)に触れることなく、国際的な人道的配慮の欠如(=兵器被害者への無神経さ)について謝罪するという、高度な切り分けに成功しました。さらに、日本の原爆被害者団体やサイモン・ヴィーゼンタール・センターに直接連絡を取り、説明と謝罪を行うという具体的な行動も明らかにしました。この誠実かつ網羅的な対応が、国際的な危機を沈静化させる決定打となりました。
「日本に来たくない」は嘘|データが示すBTSと日本の強固な関係
「反日」のレッテルを貼られ、「日本に来たくない」とまで噂されたBTSですが、現実はその真逆です。私が注目するのは、まさにこの論争の「後」に彼らが日本で達成した圧倒的な実績です。データは、彼らと日本市場およびファンとの関係が極めて強固であることを証明しています。
圧倒的な商業的成功|論争後にオリコン年間1位を達成
もし本当に彼らが「反日」であり、日本のファンが彼らを拒絶したのであれば、商業的成功はあり得ません。しかし、事実は異なります。BTSの日本における最大の商業的成功の多くは、2018年の論争の「後」に達成されています。
2019年リリースのシングル『Lights/Boy With Luv』は、日本レコード協会からミリオン認定を受けました。決定的なのは2021年にリリースされた日本ベストアルバム『BTS, THE BEST』です。このアルバムは累計売上100万枚に迫り、オリコン年間アルバムランキングで堂々の1位を獲得しました。これは、海外アーティストとしては1984年のマイケル・ジャクソン以来、37年ぶりとなる歴史的快挙です。このデータは、論争が彼らの人気に永続的な悪影響を与えなかったことを明確に示しています。
日本におけるCD売上実績(主な作品)
発売日 | タイトル (種別) | オリコン最高位 | 主な認定 (RIAJ) |
2018/11/07 | FAKE LOVE/Airplane pt.2 (S) | 1位 | ダブル・プラチナ |
2019/07/03 | Lights/Boy With Luv (S) | 1位 | ミリオン |
2020/07/15 | MAP OF THE SOUL : 7 ~THE JOURNEY~ (A) | 1位 | ミリオン |
2021/06/16 | BTS, THE BEST (A) | 1位 | ミリオン (オリコン年間1位) |
(S)はシングル、(A)はアルバム
途切れないライブ活動|スタジアムを埋め尽くす動員力
「日本に来たくない」という噂を否定するもう一つの強力な証拠が、大規模な日本ツアーの継続です。BTSは論争の直後である2018年11月から、日本で4大ドームツアー(東京・大阪・名古屋・福岡)を敢行し、計38万人を動員しました。
翌2019年には、さらに規模を拡大したスタジアムツアー「LOVE YOURSELF: SPEAK YOURSELF’ – JAPAN EDITION」を開催しました。大阪と静岡でのわずか4公演で、合計21万人を動員するという驚異的な記録を打ち立てています。日本市場へのコミットメントと、それに応えるファンの熱狂がなければ、このような大規模な興行は成立しません。
日本での主要コンサートツアー実績(時系列)
年 | ツアー/イベント名 | 主な会場 | 総動員数(推定/公表) |
2017 | THE WINGS TOUR | 6都市13公演 | 約145,000人 |
2018 | FANMEETING VOL.4 | 横浜アリーナ、大阪城ホール | 約90,000人 |
2018 | WORLD TOUR ‘LOVE YOURSELF’ | 4大ドーム | 約380,000人 |
2019 | SPEAK YOURSELF’ – JAPAN EDITION | ヤンマースタジアム長居、エコパスタジアム | 約210,000人 |
継続するメディア露出|主要音楽番組への復帰
「ミュージックステーション」への出演中止は象徴的な出来事でしたが、これは日本のテレビ放送からの永久追放を意味しませんでした。
論争の後、BTSは日本の主要な大型音楽特番への出演を継続しています。2020年には「THE MUSIC DAY」や「FNS歌謡祭 夏」、2021年には「CDTVライブ!ライブ!」や「輝く!日本レコード大賞」などに出演しており、日本の放送局との関係が維持・修復されたことを示しています。
まとめ|「反日」を超えた文化的無神経さと強靭なファンダムの現実
私が分析した結果、BTSが「反日」であるというレッテルは事態を過度に単純化したものであり、「日本に来たくない」という仮説は、圧倒的な客観的データによって明確に否定されます。
論争の発端は、積極的な敵意の表明(=反日)というよりも、ある国家の祝祭的な文脈が、別の国家のトラウマ的なイメージを軽率に使用してしまった「深刻な文化的無神経さ」と「歴史認識の衝突」にありました。それが政治的緊張によって増幅され、大きな騒動となったのが真相です。
しかし、その後のミリオンセラー達成や、数十万人を動員し続けるスタジアムツアーという現実は、政治的なメディアの嵐を乗り越えるほど強靭な関係性が、BTSと日本のファンダムの間に存在することを証明しています。この事実は、文化的な結びつきが、短期的な地政学的摩擦よりもはるかに強力であることを示す、重要な事例と言えます。