【完全網羅】NMIXXの全アルバムを時系列で徹底解説!
NMIXXは、ただのK-POPガールズグループではありません。彼女たちは「MIXXPOP」という、複数のジャンルを1曲に融合させる大胆な音楽スタイルと、壮大な世界観を武器にシーンに登場しました。その実験的なサウンドは当初、賛否両論を巻き起こしましたが、それこそが彼女たちの計算された戦略の始まりでした。
私がこの記事で解説するのは、NMIXXがデビューから現在までにリリースした全アルバムの軌跡です。彼女たちがいかにして独自の道を切り開き、多くのファンを魅了してきたのか、その進化の物語を一緒にたどっていきましょう。
デビュー初期(2022年)|礎を築いた『Ad Mare』と『Entwurf』
2022年はNMIXXにとって、自らのアイデンティティをK-POPシーンに刻み込んだ重要な年です。この年にリリースされた2枚のシングルアルバムは、彼女たちの核となる音楽性とコンセプトを確立し、市場の反応を試すための戦略的な一手でした。
1st Single『Ad Mare』|賛否両論の衝撃的デビュー
2022年2月22日にリリースされた『Ad Mare』は、NMIXXの船出を告げる強烈なデビュー作です。ラテン語で「海へ」を意味するこのアルバムは、その名の通り、MIXXTOPIAという未知の領域へ向かう彼女たちの航海の始まりを宣言しました。
このアルバムの核心は、タイトル曲「O.O」が提唱する「MIXXPOP」にあります。バイレファンキとティーンポップロックを急激に行き来する前代未聞の楽曲構成は、多くのリスナーに衝撃を与え、文字通り賛否両論を巻き起こしました。しかし、この一見奇抜な楽曲こそが、他とは違うNMIXXだけの個性を強烈に印象づける結果となったのです。
一方で、収録曲「占 (TANK)」はグルーヴィーで聴きやすく、メンバーの高いボーカルスキルを存分に発揮する楽曲でした。この2曲の対比は、NMIXXが持つ音楽性の幅広さを示唆しています。商業的にも、『Ad Mare』はJYPエンターテインメントという大手事務所の期待感を背景に、限定盤の「ブラインドパッケージ」が予約だけで6万枚以上を記録し、最終的に当時のガールズグループデビューアルバム初動売上記録を更新する大成功を収めました。
「O.O」への評価とアルバム売上の乖離は、NMIXXのデビューが計算された戦略であったことを証明しています。物議を醸すほどの独創性で熱狂的なコアファンダム(NSWER)を形成し、まず揺るぎない支持基盤を固めることに成功したのです。
2nd Single『Entwurf』|MIXXPOPの深化と世界観の拡張
デビューから約7ヶ月後の2022年9月19日にリリースされた『Entwurf』は、デビュー作で示した実験的な方向性をさらに推し進めた一枚です。ドイツ語で「草稿」を意味するこのアルバムで、NMIXXは自らの音楽性と世界観をさらに洗練させました。
タイトル曲「DICE」は、「O.O」のMIXXPOPスタイルを継承しつつ、ジャズやファンクの要素を取り入れることで、より完成度の高い楽曲へと進化を遂げています。ジャンルの転換は健在ながら、その繋ぎはよりスムーズになり、NMIXXのパフォーマンス能力の高さを改めて証明しました。
コンセプト面では、不思議の国のアリスを彷彿とさせるボードゲームがモチーフとなり、「敵対者」の存在が示唆されるなど、MIXXTOPIAの世界観がより具体的に描かれました。プロモーションでは、グループ名を反転させた謎のSNSアカウント「XXIWN」を登場させるなど、ファンを物語に引き込む巧みな仕掛けも光ります。
このアルバムはCIRCLEチャート基準で56万枚以上を売り上げ、デビュー作を上回る商業的成功を収めました。これにより、NMIXXの実験的なスタイルが一部の熱狂的なファンだけでなく、着実に支持を広げていることを証明し、第4世代ガールズグループの中で確固たる「実験者」としての地位を築いたのです。
大衆性への転換期(2023年)|『expérgo』と『A Midsummer NMIXX’s Dream』
2023年は、NMIXXがキャリアの新たなフェーズへと移行した転換の年です。確固たるファンダムを築いた彼女たちは、次なるステップとして、より広い層のリスナーにアピールするための戦略的な舵取りを見せました。
1st EP『expérgo』|大衆性を意識した戦略的転換
2023年3月20日にリリースされた初のEP『expérgo』は、NMIXXのキャリアにおける大きなターニングポイントとなる作品です。ラテン語で「目覚めさせる」を意味するこのアルバムで、彼女たちは音楽的に大きな変化を遂げました。
タイトル曲「Love Me Like This」は、これまでの急激なジャンル転換を封印し、洗練されたR&Bとヒップホップを基調とした、一貫性のある楽曲構成を採用しています。この変化は、メンバーたちの卓越したボーカルハーモニーをじっくりと聴かせることに焦点を当てており、MIXXPOPに戸惑いを感じていたリスナーからも高い評価を受けました。
この戦略的転換の背景には、当時のK-POP市場でNewJeansやIVEといったグループが「イージーリスニング」の楽曲でデジタルチャートを席巻していた状況があります。NMIXXは、物理アルバムでの強固な基盤に加え、大衆的な人気指標であるデジタル音源での成功を目指したのです。
結果として、『expérgo』は100万枚に迫るセールスを記録し、コアファンダムが健在であることを証明しました。同時に、「Love Me Like This」が韓国内の主要デジタルチャートで上位にランクインしたことで、NMIXXは新たなファン層の獲得にも成功し、その人気を不動のものにしたのです。
3rd Single『A Midsummer NMIXX’s Dream』|次章への架け橋
2023年7月11日にリリースされた『A Midsummer NMIXX’s Dream』は、『expérgo』の成功の勢いを維持しつつ、次の壮大なコンセプトへと繋ぐ重要な役割を果たしたシングルアルバムです。シェイクスピアの戯曲から着想を得た、軽やかで幻想的な夏のコンセプトが特徴です。
タイトル曲「Party O’Clock」は、JYPエンターテインメントの創設者であるJ.Y. Parkが自らプロデュースを手がけたことでも大きな話題となりました。これは事務所からの強力な支持を示すと同時に、NMIXXの新たな魅力を引き出す一曲となっています。
この作品は、これまでの強烈な世界観から一息つき、ファンに新たな楽しみを提供しました。それでいて売上は85万枚を超える高い水準を記録し、ファンダムの揺るぎない支持を改めて証明しました。この幻想的な間奏曲を経て、NMIXXは次なる野心的なプロジェクト『Fe3O4』シリーズへと歩みを進めます。
独自の道を確立した現在(2024年〜)|『Fe3O4』三部作
2024年から始まった『Fe3O4』三部作は、NMIXXのこれまでの歩みを集大成し、彼女たちの芸術的アイデンティティを成熟させた最も野心的なプロジェクトです。デビュー当初の実験性と、後に獲得した大衆性を見事に統合しています。
『Fe3O4』シリーズのコンセプト|磁力でファンを惹きつける物語
この三部作のタイトル『Fe3O4』は、磁力を持つ鉱物「磁鉄鉱(マグネタイト)」の化学式です。この「磁力」というテーマは、NMIXX自身が持つ魅力で人々を惹きつけ、現実世界の様々な壁や障害を乗り越えていくという壮大な物語を象徴しています。
このシリーズは、NMIXX自身のキャリアを反映した物語にもなっています。
シリーズ名 | テーマ | NMIXXのキャリアとの関連 |
Fe3O4: BREAK | 壁を壊す | デビュー当初の批判やジャンルの慣習を打ち破ってきた道のり |
Fe3O4: STICK OUT | 際立つ | 競争の激しいK-POP市場で確立した唯一無二の存在感 |
Fe3O4: FORWARD | 前進する | ファンを自分たちの世界へと導くグループの成熟と自信 |
この三部作を通じて、NMIXXはもはや市場に挑戦するのではなく、完全に確立された自分たちの世界へと、自信を持ってファンを「惹きつけている」のです。
『Fe3O4: BREAK』&『Fe3O4: STICK OUT』|成熟したMIXXPOPの提示
三部作の最初の2作品は、NMIXXの音楽的な成熟を明確に示しています。『Fe3O4: BREAK』のタイトル曲「DASH」は、オールドスクールなヒップホップとR&Bを基盤に、より自然で洗練された形でMIXXPOPを再統合することに成功しました。
続く『Fe3O4: STICK OUT』のタイトル曲「별별별 (See that?)」では、カントリーロックとヒップホップを融合させるという新たな挑戦を見せ、その音楽的探求心が尽きることはありません。両方のEPはそれぞれ78万枚、64万枚を超えるセールスを記録し、ファンダムの安定した支持を示しました。
『Fe3O4: FORWARD』|三部作の集大成
2025年3月17日にリリースされた『Fe3O4: FORWARD』は、壮大な三部作の完結編です。タイトル曲「KNOW ABOUT ME」は、自信に満ちたモダンなヒップホップサウンドで、彼女たちの旅の最終章を飾るにふさわしい楽曲となっています。
コンセプトビジュアルでは、空、海、宇宙といった「航海」や「超越」をテーマにしており、NMIXXが新たなステージへと前進する姿を象徴的に描いています。このEPは初動売上で70万枚以上を達成し、NMIXXが実験性と大衆性という二つの要素を完璧に両立させ、K-POPシーンにおける独自の地位を確立したことを証明しました。
NMIXXのパフォーマンスと今後の展望
NMIXXの真価は、アルバム音源だけでなく、その圧巻のライブパフォーマンスによって証明されます。彼女たちのステージは、音楽的アイデンティティを表現する最高の舞台です。
ライブパフォーマンスの魅力|音源を超える圧巻の実力
NMIXXのライブは、単なる楽曲の再現ではありません。「Love Me Like This」のロックバージョンや、「O.O」のスーパーヒーローバージョンなど、ライブでしか聴けない特別なアレンジは、彼女たちの音楽的多才性を示しています。
セットリストには、NCT 127の「Kick It」やYOASOBIの「夜に駆ける」といった高難易度のカバー曲も含まれており、メンバー全員がボーカル、ダンス、ラップの全てをこなす「オールラウンダー」グループであることを裏付けています。その安定した生歌唱は「ボーカルの強豪」と高く評価されており、ライブこそがNMIXXの魅力を最も体感できる場なのです。
今後の活動とフルアルバムへの期待
デビューから着実な成長を遂げてきたNMIXXですが、ファンが次に期待するのは、初のフルアルバムのリリースです。これは同世代のライバルグループの多くが既に達成しているマイルストーンであり、NMIXXの芸術的な深さと幅をさらに示す絶好の機会となるでしょう。
ワールドツアーや海外の音楽イベントへの参加も増えており、彼女たちの「磁力」は、韓国国内だけでなく世界中のファンを惹きつけ始めています。卓越したライブパフォーマンス、深く魅力的な世界観、そして多彩なMIXXPOPサウンド。この三つの柱を武器に、NMIXXはこれからも私たちを新たな世界へと導いてくれるはずです。
まとめ
NMIXXのアルバムの軌跡は、計算された戦略と進化の物語です。賛否両論を巻き起こした衝撃的なデビューから、大衆的人気を獲得した戦略的転換、そして実験性と大衆性を融合させた独自のアイデンティティの確立まで、彼女たちは常に挑戦を続けてきました。
MIXXPOPという唯一無二の武器と、メンバー全員の高い実力に裏打ちされたNMIXXは、第4世代K-POPガールズグループの中でもひときわ異彩を放つ存在です。彼女たちの航海はまだ始まったばかり。これからどんな音楽と世界観で私たちを驚かせてくれるのか、その活動から目が離せません。