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『NewJeans』の活動休止は事実上の解散?【係争の全記録】

サラ・チェ (Sara Choi)
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2024年11月28日、世界中を魅了したガールズグループNewJeansが、所属事務所ADORとの専属契約解除を一方的に発表しました。成功の絶頂にあった彼女たちの活動が突然停止したこの出来事は、単なる契約トラブルではありません。

私がこの問題で最も重要だと考えているのは、K-POP業界が抱える構造的な問題、創造性と企業論理の衝突、そしてアーティストの権利という普遍的なテーマを浮き彫りにした点です。

この記事では、NewJeansの活動休止に至るまでの経緯、複雑な対立の背景、そして法廷闘争の主要な論点を徹底的に解説し、彼女たちの未来を展望します。

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対立の構造|HYBE・ADOR・ミンヒジン氏の複雑な関係

今回の騒動を理解するためには、登場人物たちの複雑な関係性を紐解く必要があります。巨大企業HYBE、その傘下レーベルADOR、そしてNewJeansをプロデュースしたミン・ヒジン氏、それぞれの思惑が絡み合っています。

HYBEのマルチレーベルシステムとその矛盾

HYBEは、複数のレーベルが独立した創造性を発揮することを目的とした「マルチレーベルシステム」を導入しています。このシステムは、各レーベルに自律性を与えつつ、企業全体のリソースを活用できるというメリットを謳っています。

しかし、今回のADORとの対立は、そのシステムの矛盾を露呈させました。ADORの独立性は、親会社であるHYBEの経営方針と一致する範囲に限定されていたのです。ミン・ヒジン氏がHYBE傘下の別グループILLITによるコンセプト模倣を指摘した途端、HYBEは親会社としての権力を行使し、監査に着手しました。私が思うに、これはレーベルの「自律性」が条件付きのものであったことを示す象徴的な出来事です。

「NewJeansの母」ミン・ヒジン氏の二面性

ミン・ヒジン氏は、NewJeansのユニークな世界観を創り上げた天才プロデューサーとして「NewJeansの母」と称されています。メンバーたちが彼女との活動継続を強く望んでいることからも、その信頼関係の深さがうかがえます。

一方でHYBEにとっては、統制の効かない経営者という側面も持っていました。HYBEは、ミン氏がADORの経営権を奪おうと画策したと主張し、両者の対立は決定的なものになります。ミン氏の創造性がグループの成功に不可欠であったと同時に、その存在が巨大な企業組織との軋轢を生む原因にもなったのです。

水面下の金銭トラブル|プットバックオプション交渉の決裂

公には創造性の対立や経営権の問題がクローズアップされていますが、その裏では巨額の金銭を巡る交渉が決裂していました。ミン・ヒジン氏が保有するADOR株をHYBEに買い取らせる権利、通称「プットバックオプション」の交渉です。

ミン氏は当初の評価額を大幅に上回る金額を要求しましたが、この交渉は決裂します。この金銭的な対立が、両者の信頼関係を根底から揺るがしたことは間違いありません。私が考えるに、この紛争の本質は、芸術的な対立だけでなく、巨額の利益分配を巡るシビアなビジネス闘争でもあるのです。

激動の2024年|成功の裏で進んだ亀裂の記録

2024年は、NewJeansが輝かしい成功を収める一方で、水面下では深刻な対立が進行していた異常な年でした。ファンが目にする華やかな活動の裏で、彼女たちの未来は大きく揺れ動いていたのです。

輝かしい成功と深まる対立のタイムライン

NewJeansの2024年は、まさに光と影が交錯する一年でした。春には大規模な活動計画が発表されファンは熱狂しましたが、その直後から事務所との対立が表面化します。

以下は、その二つの軌跡をまとめたタイムラインです。

日付 (2024年)公的な活動・成果水面下の対立・法的措置
3月27日シングル、日本デビュー、東京ドーム公演、2025年ワールドツアーの計画を発表
4月22日HYBEが経営権奪取疑惑でADORの監査を開始
5月7日ミン・ヒジン氏がHYBEに対し仮処分を申請
5月24日シングルアルバム『How Sweet』をリリースし大ヒット
6月21日日本デビューシングル『Supernatural』をリリース
6月26日〜27日東京ドームでのファンミーティングを大成功させる
11月13日NewJeansメンバーが契約違反を主張する内容証明をADORに送付
11月28日NewJeansが記者会見で契約解除を発表

このように、商業的な成功のすぐ裏で、法的な闘争が激化していたことが分かります。

東京ドーム公演の裏側

特に象徴的だったのが、6月の東京ドームでのファンミーティングです。対立が泥沼化する中でも、NewJeansは海外アーティストとして史上最速での東京ドーム公演を成功させ、ファンとの絆の強さを見せつけました。

この時、メンバーはすでに事務所との間で深刻な問題を抱えていたはずです。そのような状況下で見せた完璧なパフォーマンスは、彼女たちのプロフェッショナリズムと、この活動に懸ける強い意志の表れでした。

法廷闘争の行方|3つの主要な争点

NewJeansが発表した契約解除は、法的な拘束力を持ちません。今後、彼女たちの未来は法廷での判断に委ねられます。争点は主に3つあり、そのどれもが今後のK-POP界に大きな影響を与えるものです。

契約の有効性|「信頼関係の破綻」は認められるか

NewJeans側の最大の主張は、事務所との「信頼関係が回復不可能なほどに破綻した」という点です。精神的な苦痛により、これ以上の契約継続は実質的に不可能だと訴えています。

対するHYBEとADORは、契約が2029年まで有効であると主張し、契約の履行を求めています。韓国のエンターテインメント法では、この「信頼関係の破綻」が契約解除の正当な理由として認められるケースがあります。裁判所が、ミン・ヒジン氏の解任を契約の根幹を揺るがす出来事だと判断するかどうかが、最大の鍵となります。

巨額の違約金|支払い義務は誰にあるのか

契約を一方的に破棄した場合、通常は莫大な違約金が発生します。報道によれば、その額は最大で680億円にものぼるとされています。

NewJeans側は「責任は事務所側にある」として、違約金の支払いを全面的に拒否しています。この問題の行方は、前述の契約有効性の判断に直結します。もし、ミン・ヒジン氏のプロデューサーとしての役割が「契約の重要な前提」であったと裁判所が認めれば、彼女を解任しようとした事務所側が先に契約を破ったと見なされ、メンバーの違約金支払い義務がなくなる可能性があります。

グループ名「NewJeans」の行方と「NJZ」という布石

私がこの法廷闘争で最も注目しているのが、グループのアイデンティティを巡る戦いです。「NewJeans」という名前の商標権は事務所であるADORが保有しており、メンバーがこの名前を使えなくなるリスクがあります。

このリスクに対し、メンバー側は極めて戦略的な手を打ちました。契約解除を発表する前日に、新たな名称と思われる「NJZ」という商標を複数の分野で出願していたのです。これは、事務所を離れたアーティストが名前も楽曲も失うという過去の事例を覆す、画期的な動きです。この知的財産を巡る攻防は、今後のアーティストの権利闘争における新たな指針となるでしょう。

分かれる世論|ファンダムと業界の温度差

この一件に対する世間の反応は、立場によって大きく分かれています。ファンからの熱い支持がある一方で、業界からは厳しい目が向けられています。

Bunnies(バニーズ)からの揺るぎない支持

Bunnies(バニーズ)として知られるNewJeansのファンダムは、一貫してメンバーの決定を支持しています。ファンは、彼女たちが自らの権利と幸福のために立ち上がった勇敢な行動だと捉えています。

ファン団体は声明を発表し、メンバーを全面的に支持する姿勢を明確にしています。この揺るぎない支持は、法廷闘争を戦うメンバーにとって大きな精神的支柱となっています。

業界団体からの厳しい批判

ファンとは対照的に、韓国芸能製作者協会などの業界団体は、NewJeansの行動を「K-POPの基盤を揺るがす無責任な行動」と厳しく非難しています。

K-POPのビジネスモデルは、練習生期間の巨額な先行投資をデビュー後の活動で回収するという構造に基づいています。トップアーティストが成功後に簡単に契約を破棄できるようになれば、このモデル自体が崩壊しかねないという危機感が業界にはあります。アーティストの権利と、業界のシステム維持という二つの正義が衝突しているのです。

まとめ|NewJeansの未来とK-POPが抱える課題

NewJeansの活動休止とそれに伴う法廷闘争は、単なる一グループのスキャンダルではありません。これは、K-POPという巨大な産業が抱える構造的な問題を浮き彫りにした、歴史的な分水嶺です。メンバーの未来には、いくつかのシナリオが考えられます。訴訟に勝利し新たな名前で再出発する道、交渉によって円満な分離を目指す道、そして最悪の場合、敗訴して巨額の負債を背負う道です。

いずれの結果になるにせよ、この一件が業界に与えた衝撃は計り知れません。HYBEのマルチレーベルシステムの脆弱性、旧態依然とした専属契約のあり方、そしてアーティストの権利意識の高まり。NewJeansの5人が起こした行動は、これらのテーマについて業界全体が再考を迫られるきっかけとなりました。

私が確信しているのは、彼女たちの戦いが、未来のアーティストたちがより公正な環境で活動するための道を切り開く一助となることです。一つの時代を象徴する音楽を生み出した5人の少女たちが、今度は自らの手で未来を再定義できるのか。世界がその行方を見守っています。

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