スキズのメンバー脱退、本当の理由は?ウジンの「一身上の都合」の真相

K-POP第四世代のトップランナーとして、世界的な人気を誇るStray Kids。彼らの魅力は、メンバー自らが作詞作曲を手掛ける「自主制作アイドル」としての確固たるアイデンティティにあります。しかし、彼らの道のりは決して平坦なものではありませんでした。私がStray Kidsの歴史を深く知る中で、特に衝撃を受けたのが、デビューから2年足らずで起きたメインボーカル、ウジンの突然の脱退です。
2019年10月28日、所属事務所のJYPエンターテインメントは「一身上の都合」という短い言葉で彼の脱退を発表しました。この曖昧な言葉は、ファンの間に大きな混乱と悲しみ、そして数多くの憶測を生みました。なぜ、固い絆で結ばれていたはずの9人の物語は、突然終わりを告げたのでしょうか。
この記事では、ウジン脱退の公式発表の裏に隠された真相と、その後のStray Kidsとウジンが歩んだそれぞれの道筋に深く迫ります。
突然の脱退劇|「一身上の都合」が残した謎
Stray Kidsの歴史を語る上で、ウジンの脱退は避けて通れない大きな転換点です。この出来事がファンに与えた衝撃の大きさを理解するためには、彼らがデビュー前から築き上げてきた「9人」という特別な絆について知る必要があります。
9人の神話の崩壊
Stray Kidsは、2017年に放送されたサバイバル番組『Stray Kids』を通じて結成されました。この番組は、リーダーのバンチャンが選んだ9人の練習生が「全員でデビューする」という目標を掲げ、事務所のミッションに挑むという異色の構成でした。
番組中、リノとフィリックスが一度脱落するという過酷な試練を経験します。しかし、最終的には9人でデビューするチャンスが与えられ、見事にその夢を掴み取りました。この「9人でなければ意味がない」という物語は、グループとファンの間で「OT9(One True 9)」という神話となり、彼らのアイデンティティの根幹を成していたのです。だからこそ、2019年10月28日の突然の脱退発表は、単なるメンバーの減少ではなく、グループの魂そのものが失われたかのような衝撃を与えました。
公式発表の曖昧な言葉
JYPエンターテインテインメントが発表した公式声明は、非常に簡潔なものでした。
「これまでStray Kidsのメンバーとして共に活動してきたウジンが、一身上の都合によりグループを脱退し、専属契約も解除することとなりました。」
この「一身上の都合」という言葉は、具体的な理由を一切明かさない定型句です。ファンが最も知りたい「なぜ」という問いに答えることなく、情報の空白を生み出しました。この説明不足が、後に様々な憶測や、さらには悪意のあるデマが広がる土壌となってしまったことは否定できません。
脱退理由の真相|囁かれた複数の説
公式な理由が明かされなかったため、ウジンの脱退理由については、今なおファンの間で様々な説が語られています。ここでは、当時から現在に至るまで囁かれている主な説を、客観的な事実に基づいて検証していきます。
音楽性の違いという説
最も有力視されているのが、グループが目指す音楽の方向性との違いです。ウジンはクリアで伸びやかな歌声を持つ、グループのボーカルラインを支える中心メンバーでした。彼の歌声は、しばしば「天使のよう」と評されるほど、正統派でメロディアスなスタイルが特徴でした。
一方で、ウジン脱退後のStray Kidsは、2020年に発表した「God’s Menu」を機に、より攻撃的で実験的なサウンド、いわゆる「麻辣味ジャンル」へと大きく舵を切ります。ラップの比重が増し、複雑な電子音が絡み合うこのスタイルは、彼らを世界的なスターダムに押し上げる原動力となりました。結果として、彼の不在が、プロデューサーユニットである3RACHA(バンチャン、チャンビン、ハン)の音楽的自由度を高め、グループ独自のサウンドを確立させる一因になったという見方は根強く存在します。
個人的な問題やスキャンダルという説
脱退から約1年後の2020年9月、ウジンは海外のSNSユーザーからセクシャルハラスメントに関する虚偽の告発を受けました。このデマは瞬く間に拡散され、脱退理由と結びつけて語られることもありました。
しかし、これは完全な事実無根です。ウジンと所属事務所は法的に対抗し、警察の捜査によって、投稿者がブラジル在住のアンチファンであり、全くの捏造であったことが証明されました。この事件は、彼がソロとして再起する上で非常に大きな試練となりましたが、脱退の直接的な理由ではありません。
将来のキャリアプランの違い
もう一つ考えられるのが、個人のキャリアプランに関する考え方の違いです。グループを離れた後、ウジンはソロ歌手としてだけでなく、俳優としても活動の幅を広げています。
2023年にはHBO Maxのオリジナルドラマ『Além do Guarda-Roupa』で主演を務めるなど、新たな分野への挑戦を続けています。アイドルグループの一員としてではなく、より多角的なアーティスト活動を早い段階から視野に入れていた可能性も、脱退理由の一つとして考えられます。
それぞれが歩む道|8人のStray Kidsとソロのウジン
ウジンの脱退という大きな決断の後、Stray Kidsとウジンは、それぞれ全く異なる道を歩み始めました。彼らがどのように現在地へとたどり着いたのか、その軌跡を追います。
8人体制で世界的スターへ|Stray Kidsの進化
ウジンの脱退は、残された8人のメンバーにとって計り知れない痛みでした。しかし、彼らはその逆境をバネに、より一層結束を固めます。そして、前述の通り「God’s Menu」や「Back Door」といった楽曲で、唯一無二の音楽スタイルを確立しました。
この音楽的進化は、彼らをK-POPのトップグループへと押し上げ、今や世界中のドームを埋め尽くすグローバルアーティストへと成長させました。多くの新しいファンにとって、8人体制こそがStray Kidsの完成形であり、彼らのパフォーマンスは今もなお世界を熱狂させています。
苦難を乗り越えたソロ活動|ウジンの現在
一方、ウジンは巨大な事務所のバックアップを離れ、ソロアーティストとしての道を歩み始めました。2021年8月にミニアルバム『The moment : 未成年, a minor.』でソロデビューを果たし、自身のボーカルの強みを活かしたポップやR&Bを基調とした楽曲を発表しています。
活動内容 | 詳細 |
音楽活動 | 複数のミニアルバムをリリース。作詞にも参加し、自身の物語を表現。 |
グローバル活動 | 日本でのファンコンサートやラテンアメリカツアーなど、海外ファンとの交流に注力。 |
俳優活動 | HBO Maxドラマ『Além do Guarda-Roupa』で主演を務め、ブラジルで人気を博す。 |
兵役 | 2025年1月20日に陸軍軍楽隊へ入隊予定。 |
前述の虚偽疑惑という苦難を乗り越え、彼は着実に自身のキャリアを築いています。大手事務所の力に頼らず、独自の戦略で世界にファンベースを広げる彼の姿は、不屈の精神を体現していると言えるでしょう。
まとめ
Stray Kidsウジンの脱退理由は、公式には「一身上の都合」としか語られていません。しかし、その後の両者の歩みを見ると、音楽性の違いやキャリアプランに対する考え方の相違が大きな要因であったと推測できます。
この分裂は、ファンにとっては悲しい出来事でした。しかし、皮肉にも、Stray Kidsにとってはグループのアイデンティティを先鋭化させ、世界的な成功を収めるきっかけとなりました。ウジンにとっても、ソロアーティストとして、そして俳優として、自らの表現を追求する新たな道を開くことにつながりました。
彼らの道が再び交わることはないかもしれません。それでも、かつて9人で同じ夢を追いかけたという事実は、Stray Kidsとキム・ウジン、両者の歴史の始まりとして、永遠に刻まれ続けるのです。