TWICEジョンヨンの体重増加は病気のせい？ 知られざるK-POPの光と影

「TWICE 太った」という検索キーワードを目にした時、私が感じたのは単なる好奇心への嫌悪感だけではありませんでした。その言葉の奥には、世界的なK-POPアイドルが直面する、計り知れないプレッシャーと複雑な現実が隠されています。特にメンバーであるジョンヨンさんの外見の変化は、多くのメディアやネット上で議論を呼びました。

しかし、その多くは表面的な現象をなぞるに過ぎません。彼女の物語を深く知ることは、一人のアイドルの体重問題を追うことではなく、K-POPという華やかな世界の裏側、人間の心と体の繊細さ、そして逆境に立ち向かう精神の力強さを理解する旅です。

この記事では、ジョンヨンさんの経験を軸に、彼女と同じくTWICEのメンバーであるモモさん、ジヒョさんのエピソードも交えながら、K-POPアイドルの身体にまつわる光と影を解き明かしていきます。

ジョンヨンを苦しめた健康問題の連鎖

ジョンヨンさんの外見の変化には、深刻な健康問題との闘いという、見過ごされがちな背景が存在します。彼女が経験した苦しみは、単一の出来事ではなく、身体的な問題が精神的な苦痛へと連鎖していく、過酷な道のりでした。

発端となった頚椎椎間板ヘルニア

ジョンヨンさんの闘いが公になったのは2020年6月、頚椎椎間板ヘルニアの手術を受けたという事実からでした。TWICEのパフォーマンスは激しいダンスが魅力の中心であり、首に大きな負担がかかるこの症状は、彼女の活動に深刻な影響を及ぼします。

その状況がファンの目に明らかになったのは、2020年8月のオンラインコンサートです。他のメンバーがステージで踊る中、彼女は椅子に座って参加せざるを得ませんでした。この光景は、彼女が単なる不調ではなく、深刻な身体的問題を抱えていることをはっきりと示していました。事務所も「アーティストの健康を最優先に考慮した」と説明しており、これが後に続く長い闘いの始まりだったのです。

治療薬ステロイドの副作用

ジョンヨンさんの外見に変化が現れ始めたのは、このヘルニア治療の過程でした。一部では「激太り」と報じられましたが、その裏には避けられない医学的な理由がありました。彼女の体重増加は、治療で用いられたステロイド薬の副作用が主な原因です。

ステロイドは、椎間板ヘルニアのような症状が引き起こす激しい痛みや炎症を抑えるために処方されます。しかし、その強力な効果の代償として、食欲増進やむくみ、直接的な体重増加といった副作用を伴うことが知られています。これは本人の意思や努力、いわゆる「自己管理」とは全く関係なく起こる生理的な反応です。彼女が直面していたのは、治療を進める上で避けられない、非常に困難なジレンマでした。

身体から心へ｜不安障害との闘い

身体的な痛み、治療による外見の変化、そして完璧を求められるトップアイドルとしてのプレッシャーは、ジョンヨンさんの精神に重くのしかかりました。彼女は複数回にわたって活動を休止しますが、その理由は身体的な問題だけにとどまりませんでした。

2020年10月、事務所は彼女が「心理的に大きな緊張状態や不安を抱えている」ことを理由に、活動休止を発表します。これは、頚椎の手術とその後のストレスが、彼女の精神状態に深刻な影響を与えていたことを示唆します。翌年には一時復帰を果たしたものの、再び活動を休止。この時、その理由が「パニック障害および不安障害」であることが、より明確に公表されました。この一連の出来事は、一つの身体的な怪我がいかにして深刻な精神的危機へと繋がっていくかという、痛ましい現実を浮き彫りにしています。

ジョンヨンを支えたものと回復への道のり

度重なる試練の中、ジョンヨンさんは回復への道を歩み始めます。その困難な道のりを支えたのは、他のメンバー、ファン、そして彼女自身の内面的な強さでした。彼女の回復の物語は、多くの人々に勇気を与えます。

メンバーたちの静かな寄り添い

ジョンヨンさん自身が語ったところによると、活動休止中に最も大きな力になったのはメンバーの存在でした。興味深いことに、彼女たちは「頑張って」のような一般的な励ましの言葉をかけなかったといいます。ただ黙ってそばにいる、あるいは「一緒にやろう」と自然に誘う。

このような静かで永続的なサポートは、過度なプレッシャーを避け、彼女が孤立しないように寄り添う、極めて成熟した支え方です。TWICEというグループ内の深い信頼関係が、彼女の心の回復に不可欠な役割を果たしました。

ファン（ONCE）からの温かい声援

もう一つの大きな支えは、ファン（ONCE）からの温かいメッセージでした。SNSには、彼女のパフォーマンスを求める声ではなく、健康を最優先に考え、回復を願う声が溢れました。

ファンは彼女の不在を責めることなく、安心して休養できる環境を望み、辛抱強く帰りを待ち続けました。このようなファンの肯定的な反応は、アイドルとファンの関係性がより成熟したものへと変化しつつあることを示しています。

彼女自身が見出した新たな強さ

ジョンヨンさん自身も、この困難な時期を内省と成長の機会として捉えています。休止期間があったからこそ今の自分があると認め、テニスやクライミングといった新しい趣味を通じて、自分自身の心と体に向き合いました。

このプロセスは、彼女が困難な状況を主体的に乗り越え、新たな強さを見出したことを示しています。以下の表は、彼女の闘いの道のりを時系列でまとめたものです。

この年表は、彼女の闘いが長期にわたるものであり、心身の問題が密接に絡み合っていたことを明確に示しています。

K-POPアイドルの身体に課せられる過酷な現実

ジョンヨンさんの試練は、決して彼女一人の特別な出来事ではありません。それは、K-POPという産業システムが、アーティストの身体に課してきた根源的なプレッシャーの現れです。モモさんとジヒョさんのデビュー前の経験は、そのシステムの非情な現実を物語っています。

事例｜モモが経験した壮絶なダイエット

TWICEのメインダンサーであるモモさんは、デビュー前に生命の危険すら感じるほどの壮絶なダイエットを経験しました。事務所から「1週間で7kg痩せなければステージに上げない」と通告された彼女は、固形物を一切摂らず、氷1個だけで1週間を過ごしたといいます。

「明日目が覚めるかなと不安で泣きながら寝ていた」という彼女の告白は、その過酷さを物語っています。このエピソードは、K-POP業界における「自己管理」という言葉が、時にアーティストの健康を度外視した、歪んだ目標設定に使われる現実を暴露しています。

事例｜ジヒョが受けた公開での体型批判

リーダーであるジヒョさんもまた、デビュー前のオーディション番組『SIXTEEN』で、その体型について公の場で厳しい評価に晒されました。審査員から「ぽっちゃりしている」「体重管理も自己管理」といった言葉を繰り返し投げかけられたのです。

この出来事は、K-POPアイドルにとって、外見、特に体重が才能や実力としばしば同等、あるいはそれ以上に重要な評価基準とされている事実を示しています。彼女の才能が正当に評価される前に、まず外見の基準をクリアすることが求められました。このような価値観が、業界全体のプレッシャーの土壌を形成しているのです。

アイドルを取り巻く視線と文化の変化

アーティストたちが内面で闘う一方で、彼らは常に外部の厳しい視線に晒されています。メディアの報道やネット上の言説は、彼らの精神状態に大きな影響を与えますが、近年そのあり方に変化の兆しが見られます。

メディアが作り出す「激太り」の物語

ジョンヨンさんの外見の変化について、一部のメディアは「激太り」「激ヤセ」といった扇情的な言葉で報じました。このような表現は、彼女の複雑な健康問題を単なるゴシップへと貶め、読者の共感を削ぎ落とします。

結果として、病気治療の副作用という医学的な事実が覆い隠され、個人の怠慢という誤った印象を与えかねません。メディアが作り出す物語は、オンライン上での無責任な批判を助長する危険性をはらんでいます。

ボディシェイミングとボディポジティビティの対立

他人の容姿を批判する「ボディシェイミング」への問題意識が世界的に高まっています。人の体について安易にコメントすることの危険性が認識され始め、「相手が5秒で変えられないことについてはコメントしない」という考え方も広まりつつあります。

この文脈において、ジョンヨンさんを支えたファンの応援メッセージは非常に重要です。彼らは外見の変化を非難せず、彼女の健康を心から気遣いました。これは、K-POPファンダムの中に、アーティストを全人的に尊重しようとするポジティブな文化が育ちつつあることを示しています。しかし、その一方で根強いボディシェイミング文化も存在しており、現在はまさに文化的な過渡期にあるといえるでしょう。

まとめ｜真の「自己管理」とは何か

TWICE、特にジョンヨンさんの物語を追うことで、K-POP業界における「強さ」や「自己管理」という言葉の意味を、私たちは改めて考え直す必要があります。従来、この業界で「自己管理」とは、主にスリムな体型を維持することを意味してきました。しかし、ジョンヨンさんの経験は、その定義がいかに危険で非人間的であるかを私たちに突きつけます。

私が考える真の自己管理とは、体重計の数字をコントロールすることではありません。それは、自身の心と体の健康を総合的に管理し、限界を感じた時には勇気を持って休み、回復のために周囲の助けを求めることです。ジョンヨンさんが活動を休止し、メンバーやファンの支えを得て再びステージに戻ってきた道のりこそが、新しい時代の「自己管理」の姿を体現しています。それは、弱さと向き合い、それを乗り越えていく、真に人間的な強さです。彼女の物語は、この業界の未来に、長く、そして広く響き渡っていくでしょう。